腸で酸素呼吸!?人間の新たな医療確立になるか

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研究・文献

 東京医科歯科大学の武部貴則教授が「人間も腸で呼吸できるか」という問いに可能性は極めて高いと明かす。酸素を含む液体を呼吸不全のブタに浣腸(かんちょう)してみた。すると腸から血管に酸素が移り、体内に行き渡ったというのだ。21年5月、名古屋大学や京都大学と共同で「腸呼吸」が哺乳類で見つかったと公表すると、人間にも同じ能力があるのかと騒然となったとの記事が日経新聞に掲載されていた。

腸で呼吸する生物はすでに存在する

 腸で呼吸する生物はもともと存在することは知られている。最近身近な生き物ではなくなってきたが「ドジョウ」だ。普段はエラ呼吸するドジョウだが、水温上昇などで水中の酸素濃度が低くなってくると水面に上がってきて空気を飲み込んで腸で呼吸するそうだ。飲み込んだ空気の酸素を腸から血管に取り入れてまさに「呼吸」をしているのだ。

人間は何故、肺呼吸なのか

 人間をはじめとする哺乳類や多くの地上で生活する動物は「肺呼吸」である。哺乳類の遠い遠い先祖は海洋生命から進化したものだと言われている。46億年前の地球誕生時、大気中の酸素濃度は低く、22億年前頃から突如、酸素濃度が上昇し、6~8億年前頃にはほぼ現在と同様に約20%濃度に保たれたと言われている。そう、「植物」の繁栄とともに。これに伴って海に残る生命と両生類から陸上へと進化を遂げていく中で、陸上生物は空気中の酸素を活用する選択をしたのだ。たくさんのエネルギーを生み出すのに「酸素」は都合が良いのだ。つまり、陸上で活動する生き物が高い酸素獲得率を誇る肺呼吸を身に着けていったのはごく自然の進化の流れであったというわけだ。

コロナで活躍する「ECMO エクモ」を背景に、腸呼吸が注目され始めている

 新天地で磨き上げた肺を新型コロナは襲った。肺呼吸への「信頼」を「依存」という印象に変えた事実は、呼吸器を侵す病原体の脅威が増す中で重大な警鐘といえる(日経新聞引用)。新型コロナ感染症の流行で呼吸器を侵すウイルスは人間にとって脅威であることは間違いない。そんな中、冒頭でご紹介した東京医科歯科大学の武部貴則教授は、消化管を活用して呼吸を実現するという医学史上全く新たな治療概念を確立し、2026年には医療の現場に届けたいと明確なビジョンを打ち立て、「EVAセラピューティクス」を創業した。呼吸不全になっても酸素を含む液体の浣腸1回で30~60分は低酸素状態を乗り切れる手法を確立するというのだ。人間の新たな発想というものに本当に驚いたニュースであった。

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