人間の「ミニ脳」を人工的に培養し、ラットの脳に移植して神経回路を結合させることに成功!

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研究・文献

 もうSFの世界です。昔あった映画「フライ」を思い出しました…。実験に失敗してハエ男になってしまうストーリーでしたが、人間の脳をラットに移植とな?脳細胞の無限性に感嘆すると同時に意識の世界はどこにあるのか怖くなるレポートがパブリッシュされていたよ。

 日経新聞にも掲載されていましたが、米スタンフォード大学の研究チームは、人のiPS細胞から作ったオルガノイド(ミニ脳とも言われる)を生後間もないラットの脳に移植し、神経回路を結合させることに成功したと発表している。ミニ脳はラットの成長とともに脳内で大きく複雑な構造に変化したそうだ。この研究成果は世界的に著名な雑誌英科学誌ネイチャーに掲載された。

どのような実験だったのか?

ラット脳に移植されたヒト脳オルガノイド(左上の蛍光色の部分) / image credit:Stanford University

研究チームは人由来のiPS細胞を培養し、大脳皮質の立体構造を再現した直径数ミリメートルのミニ脳を作ったそうだ。このミニ脳を生後数日のラットの脳に移植した。実験に使用したラットは免疫不全のラットを用いたため、ミニ脳に対する拒絶反応は起こらなかったとか…。移植から6カ月後には、ミニ脳はラットの脳の大きさの3分の1程度まで成長し、人のミニ脳とラットの脳の神経細胞は互いに結合し、神経回路(シナプス)を形成したそうだ(上部写真参照)。

結合した神経回路はどのような反応を示したのか?

移植した脳がどのような反応を示すかの実験も行われた。ラットのヒゲに空気を吹きつけて刺激を与えると、ラット脳内にあるミニ脳の神経細胞が活性化したことが確認されたとか。レーザー光を使って神経細胞の活動を制御する「光遺伝学」の手法があるみたいだが、ミニ脳を光で刺激しながら訓練することで、ラットの学習行動を引き起こすこともできたそうだ。同大のセルジュ・パスカ教授は「移植した人の神経細胞が動物の行動に影響を与えられることを実証できた」としている。

そしてこれは一体なんの役にたつ可能性があるのか

 脳オルガノイド(ミニ脳)単体では、その活動と病気の症状を結びつけることができない。一方、ラット脳に移植されたヒト脳オルガノイドなら、細胞を操作して、それによるラットの行動の変化を調べれば、脳内の現象と病状を結びつけることができる。こうした手法を用いれば、神経発達障害・神経精神障害・物質使用障害・神経再生障害など、さまざまな神経疾患の研究で応用できるだろうとのこと。

チームはさらに、自閉症やてんかんと関連がある珍しい遺伝性疾患「ティモシー症候群」の患者の細胞からミニ脳を作った。ラットの左右の脳の片方に患者のミニ脳、もう片方に健常者由来のものを移植して比較すると、患者のミニ脳の神経細胞は小さく、周辺の細胞と連結する構造も少なかった。この実験手法は統合失調症など他の病気の研究にもやはり応用できる可能性があるという。

倫理面を問題視する声はやはりあるみたい

 動物に人の細胞や組織を移植する研究は以前からあるが、脳の場合は倫理面での課題も指摘される。ドイツのマックス・デルブリュック分子医学センターのアグニエシュカ・リバク・ウォルフ博士は「移植によって動物が人のような認知機能を持つことにならないかなど倫理的な懸念がつきまとう。ミニ脳は研究に大きな進歩をもたらすが、利益とリスクの間の妥協点を慎重に見いだす必要がある」と指摘している。

私は冒頭にハエ男と申し上げたとおり、やはり移植したヒトの脳が自我を目覚めたらどうなるのかと想像してしまう…。もちろん成人のように高度な意識を持つことはできないだろうが、ヒトとしての意識が生まれた場合、マッドサイエンスの領域になってしまう。

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